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日々の出来事等を徒然と。偶に鬱状態になるので御注意下さい。   
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契約から数日後。

殺鬼は一人暮らしを始めた。
殺鬼自身、母親と一緒には居たくなかった。
母親の所為で自分は精神的に追い込まれたのだから。
殺鬼からすれば些細な事だが皐月からすれば可也のダメージだった。
嫌味や不満しか言わない母親が嫌いだった。
そして強くなるために死神と契約した。
人間である事を捨てて・・・・
皐月だった時の暖かさはもう消え失せていた。
一人暮らしをするという手紙を母親に出した時、返事は思ったとおりだった。
止めて欲しい訳ではない。
だが返事が無責任なのも確かだった。
マンションは父親が手配してくれたので問題ない。
家具や私物が次々と送られる。
唯それを部屋に置くだけ。
形だけの一人暮らしだった。

学校に殺鬼が行く様になって学校誰もが驚いた。
当然だ。自分はもう人間だった『皐月』ではない。
此処に居る連中は皐月の事しか知らない。
何故なら今迄皐月という人間だったからだ。
名前は文字にしなければ違いすら解らない。
読みは同じ『さつき』なのだから当然だ。
皐月として生きてこの学校という所に通い、勉学に励んでいた・・・・
勉強が好きだった訳じゃない。
勉強すれば母親に褒めて貰えると思ったから遣っていただけだ。
それ以外に理由なんて要らない。
皐月は良い子だった。
どんなに母親に貶されても反抗は全くしなかった。
きっと今の自分なら母親を責めただろう。
「お前はそんなに完璧だったのか?」と。
今学校ですべき事、それは勉強だ。
他の事に興味を持ってない殺鬼が唯一遣るべき事がそれだ。

教室に入るとクラスの誰もが驚いていた。
明るく挨拶をしていた皐月が今は無愛想に挨拶も無く自分の席に座るという
信じられない光景を目にしたのだから。
クラスの女子が一人殺鬼に駆け寄る。
「お早う。皐月ちゃん!如何したの?体調悪いのかなぁ?」
必死に殺鬼と話そうとする彼女に苛立ちを覚えたのか殺鬼は眉間に皺を寄せて
彼女にこう言った。
「五月蝿い。」
唯一言そう言った。
「え?」
彼女は呆気にとられた表情でそう言った。
周囲のクラスメイトも目を見開いて殺鬼の方を見ている。
「黙れと言ったんだ。」
相変わらずの低音でそう言うと教科書の方に視線を移す。
「皐月ちゃん、そんな言い方しなくても・・・」
「五月蝿い!!」
彼女が言い終える前にそう言った。今度は力強く。

それが殺鬼として初めて学校に行った時の事だった。

今はクラスの誰も「皐月ちゃん」とは呼ばないし、話し掛けもしない。
あの日の警告を誰もが聞いているからだ。
殺鬼に話し掛けなければ何も言われない、それが解っているから誰も
関わろうとしないのは当然の反応だ。
ただ一人を除いて・・・・
「よう、天音」
皐月の幼馴染の草凪絆である。
もっとも、今は皐月ではなく殺鬼だが。
「絆か。」
殺鬼が特に嫌がらないのは彼からの言葉に『無理』が無いからだ。
自分と話す相手が『無理』をしているのが気に喰わないからだ。
そんな殺鬼にとって絆は唯一の話し相手である。
「お前、一言が短いな。偶にはお前の方から話題を振れよ。」
「現在の経済状況について・・・」
「いや、やっぱ遠慮する。経済状況って・・・」
「なら最近起こった事件について・・・」
「待て!だから何でニュースの事ばっかり話そうとすんだよ!堅苦しいぞ!」
「他に面白そうな話題が無い。」
「日常の有触れた事で良いだろ。」
「そうか?」
こんな感じで会話は続く。
お互い最初こそぎくしゃくしていたが今はそうでもない。
相性が良いのだろう。
「転校生が来るらしいぜ」
「転校生?」
絆の言葉に興味を抱いた訳ではないが疑問は抱いていた。
この中途半端な時期に転校生が来る。
何故この学校を選んだのか、何故こんな時期にしたのか等と色々疑問を抱くのだ。
それは言い換えるならば『興味を持つ』・『気になる』と言うのが正しいだろう。
「ああ。然もこのクラスに来るらしいぜ。」
「物好きだな。」
「お前、このクラスを何だと思ってんだよ・・・。」
「只の1年1組だ。」
「・・・そうだけど。」
そうこうしてる内担任が教室に入って来た。
「はいはい皆席に着いて~」
ガタガタと音を立て、生徒達が自分の席に着く。
「このクラスに転校生が来ました~皆優しく接して下さいねぇ~」
担任がそう言うと生徒達が騒ぎ始める。
お約束だが皆美形を期待している様だ。
「入っておいで~」
担任の合図で教室に入って来た転校生にクラス全員の視線が移される。
「初めまして。儚射黒寿です。宜しくね!」
それは間違いなく殺鬼の契約相手の黒寿だ。
死神の彼が如何してこんな所に居るのかと考えたが直ぐに思惑が掴めた。

「席は、じゃあ天音さんの隣が空いてるから其処にしよう」
「はい!」
瞬間クラス全員がギョッとした。
転校初日に彼が傷付かないだろうかと誰もが心配した。
そんな心配をよそに黒寿は上機嫌で殺鬼に話し掛ける。
「天音さん!これから宜しくね!」
「ああ。」
相変わらず無愛想に言う。
要点しか言わない性格なので言う事も一言だ。
「僕の事は黒寿って呼んでね!」
「ああ。」
必要最低限の事以外は喋らないので殺鬼と会話を続けるのはある意味難しい。

休み時間。
クラスの女子達が黒寿を囲む。定番の質問攻めだ。
「儚射君って何処から来たの?誕生日は何時?」
「好きな物は?趣味とかも知りたいなぁー!」
「あははは。質問が多いなぁ。」
遠回しに面倒臭いと言っているように聞こえたのは殺鬼だけだろう。
「ねぇねぇ何処住んでるの?教えてー!」
「御免ね、そういう情報は教えられないんだ。」
「えー」
女子達の詰らなさそうな反応。黒寿は少し間を置いてこう言った。
「でもその代わり良い事を教えてあげる!」
「え?何何?」
興味を持ったのか女子達の眼が輝いている。
「それはねぇ・・・・・」
ガシッ!
「え?」
黒寿が言い終わる前に殺鬼が黒寿の肩を掴んだ。
その手に力が篭る。
「少し、御喋りが過ぎるんじゃないか?」
「へぇ?君が僕に忠告なんて珍しいね?」
「言いたい事はそれだけだ。」
そう言うと黒寿の肩を掴む手を離す。
「儚射君、大丈夫?気にしなくて良いよ。天音さん、何時もああだから・・・」
「うん。大丈夫だよ。一寸痛かったけど。」
「本当に大丈夫?保健室行く?」
「心配してくれて有難う。でも大した事ないから。」
「でも・・・」
「大丈夫だから!」
女子達が無理矢理黒寿の手を引いていこうとするのをその言葉で止めさせた。
若干怒っているんじゃないだろうかと言うくらい「大丈夫だから!」を強調していたが
言った本人は満面の笑みを浮かべている。
「そ、そっか。じゃあ良いや。」
女子達はオドオドしながら去っていく。

「何の真似だ?」
昼休みに黒寿に問い詰めてみた。
答えはもう解っている。だがそれは予想であって事実ではない。
事実が知りたい。
「君の監視と僕の仕事を両立する為だよ。」
予想通りの返答に一瞬眉間に皺が寄る。
「そうか。」
「薄々気付いてたんじゃないの?」
「そうだが・・・」
「なら良いじゃない。それに今日は君に初仕事があるよ!」
「初仕事だと?」
「そう。大切な事だから気合入れてね!」
その時、脳裏に男女の言い争う姿が映し出された。
「何だ!?これは・・・」
「惨劇のメモリーだよ。今回は彼らが主役みたいだよ。」
それは黒寿曰く惨劇が起こる前の予兆らしい。
今夜、どちらかが惨劇の主役となり、凶行に走るらしいからそれを処理しなければ
ならないらしい。実に面倒だ。
惨劇はちゃんと最後まで見届けてからではないと処理が出来ないらしい。
「全く・・・どいつもこいつも・・・」

夜23時。
泡海ヶ原公園。
「ったく!こんな時間に呼び出しやがって!」
夜遅く少年が一人ブツブツとぼやいている。
ガサッ
草村から音がしたのに驚く事もなく少年は振り向いた。
「-やっと来たか・・・呼び出しといて待たせるんじゃ・・・・!?」
少年は目の前に立つ相手を見て顔を強張らせる。
明らかに待ち合わせた相手と違うのだ。
「な、何でお前が此処に!?」
少女は問いには答えず少年に近づく。
「会いに来たの」
少女が問いに答えない事に苛立ち、少年は怒鳴る。
「だから何でお前が来るんだよ!?俺はアイツに呼ばれて来ただけだ!」
「呼んだのはあの子じゃなくて私だよ?」
少女の答えが気に入らないのか少年はまたも少女を怒鳴る。
「いい加減にしろ!まだ昼間の事が納得いかねぇのか!?」
「・・・・別れ話なんて・・・やだよ?」
解りきっていた事を口にした少女に怒りが込み上げてくる。
「もう俺達は恋人じゃねぇんだ!俺はもうアイツが好きなんだよ!お前なんかよりもずっと」
「・・・そう・・・なの?じゃあ、あの子に会いたい?」
少女の問いに少年は怒声を上げる。
「当たり前だ!」
少女は顔を伏せるとくすくすと笑い始めた。
「そう、なら今から会わせてあげる・・・」
少女は草村を漁る。そして其処から何かを取り出して少年の眼前に晒した。
「ホラ」
「!?」
それはさっき話していた今の恋人だった。
瞳は大きく見開き今にも零れ落ちそうだ。
そして眼前の彼女に首から下の体は無かった。
「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!」
余りの出来事に少年は絶叫した。
少女は持っていた首をボトっと地面に落とした。
「如何したの?会いたかったんじゃないの?」
少女は後退る少年に近づき尋ねた。
「う・・・・ぁ・・・・」
少女の問いには答えられず少年はその場を立ち去ろうとした。
だが少年の中の恋人を殺されたという事への怒りが込み上げてくる。
「お前!何で殺した!何でこんな事!こんな事して只で済むと思うのか!?」
少女は再び顔を伏せ、くすくすと笑い出した。
「だって・・・壊したかったんだもん・・・」
「は?」
少女が顔を上げた時、少女の白目部分は黒ずみ、黒目部分は赤く染まっていた。
まるで少女はもうこの世の者じゃないとでも言うかの様に。
「アンタモ壊レチャエ」
「ひっ!」
少年の悲鳴に少女は嬉しそうに少年に近づく。
少女は隠し持っていた包丁を手に少年の頭上に振り上げる。
「私ヲコンナニ傷付ケテアンタタチダケ幸セナンテユルサナイ」
「や・・・止めろ!止めてくれ!」
「サヨナラ」
少女が振り上げた包丁が少年の脳を割る。
凄まじい血飛沫が辺りを飛び散る。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
甲高い笑い声が響く。
「殺シタ!アイツラノ全テガ壊レタ!!私ダケ不幸ナンテ嫌!道連レ二シテヤッタヨ!!」
「気は済んだか?」
突如現れた声に少女は絶句する。
「憎い男と女を殺して少しは満足出来たか?」
「誰ダ!何処ニ居ル!?」
少女は正体不明の声に怒鳴る。
「憎い人間に同じ苦痛を与えられて満足なら・・・」
声の主が草村から姿を現す。殺鬼だ。
「オマエハ、死神!?」
「そうだ。お前を迎えに来た。」
その言葉に少女は声を荒げてこう言う。
「迎エダト!?死神ハ死者ニシカ迎エニ来ナイ筈ダ!私ハマダ死ンデナイ!
私ハコレカラ幸セに・・・・」
「なれない。」
「ハッ!?」
唐突な言葉に戸惑う少女に殺鬼は容赦なく現実に起きた事を説明する。
「何故ならお前はもう死んでいるからだ。」
その一言に少女は驚く事しか出来なかった。
「死因は交通事故。病院に運ばれた時にはもうお前は死んでいた。
運転手は責任を感じて自殺した。」
「ジャア何故私ハ此処ニ居ル!?」
「それはお前にこの世に悔いがあるからだ。その念が怨霊となって
この世に留まろうとする・・・そしてそれを阻止するのが私の仕事・・・」
殺鬼は黒衣から日本刀を取り出し、怨霊の少女に問う。
「覚悟は出来たか?」
怨霊の少女はその言葉で我に返り叫ぶ。
「巫山戯ルナァ!!」
怨霊の少女は震える拳を強く握り殺鬼に言い放つ。
「ナラ・・・オマエヲ殺シテ幸セニナッテヤル!」
そして殺鬼に持っていた包丁を振り上げる。
「死ネ!死神イィィィィィ!!」
叫びとともに包丁を振り下ろす。
ザクッ
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
怨霊の少女の腕が切り落される。
痛みに苦しむ怨霊の少女を見下ろすと感情のない声が言う。
「終わりだ」
振り上げられた日本刀が怨霊の少女を半分にかち割る。
「任務完了」
殺鬼がそう言うと何処からとも無く黒寿が表れた。
「どうだい?死神デビューの初仕事は?」
上機嫌な黒寿の言葉に冷たく言い放つ。
「ああ。最高の惨劇だったよ・・・・。」
その言葉に黒寿が歓喜の声を上げる。
「そっか~それは良かった♪」
その場を離れる二人を黒い影が見送る。
「あれが黒寿の契約者ね・・・黒寿が認めた唯一の人間・・・・
その力がどれ程のものか試してあげるわ・・・」
その黒い影はそう言って立ち去って行った。

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