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日々の出来事等を徒然と。偶に鬱状態になるので御注意下さい。   
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土曜日の朝、殺鬼は気ダルそうに起きると顔を洗い、
ポストから新聞を持ってリビングに向かう。
今日の新聞の見出しは『学生団体失踪事件』だ。
これは今週末に起きた事件らしいが最初は只の家出か何かの類だろうと
余り気にされていなかった。
だがもう目を逸らせないほどに自体は悪化していたようだ。
失踪した学生の人数が尋常ではないからだ。
しかもそれは同じ時間に失踪するというものだった。
何かの宗教団体に勧誘されたという事も有り得るが、だとしたら不自然だ。
対象を学生にした事、その理由、気になることは山ほどある。
考えながら冷蔵庫から牛乳を取り出そうとして気付いた。
牛乳が切れている。
「・・・仕方ない」

アパートの近くのスーパーで買い物籠を片手に目的のものを探す。
昨日の心との出来事で頭が一杯だったせいか同じところをグルグルと回っている事に気付く。
気にしすぎだろうか?そう思っても頭にこびり付いて離れなかった。
それよりも朝の牛乳を飲めなかった事が自分の中で許せなかった。
朝起きたら朝食の前に牛乳を飲むのが自分の中で義務付けられていたからである。
本当は昨日の仕事が終わった時、帰宅時に買って帰ろうと思っていたが
心との出来事が余りにも強烈で牛乳を買って帰るのを忘れていたのだ。
暫く歩きまわると目的のものを見つけ、買い物籠に入れようとした時だ。
「天音!?」
「!?」
一瞬名前を呼ばれたことに驚くが何時もの愛想のない表情で振り返る。
「絆・・・何故此処に・・・」
「買い物してるんだよ。何故って・・・」
絆の買い物籠の中には大量の菓子、それに生活必需品などが入れられていた。
「天音は何買ったんだ?」
「牛乳だ」
「それだけ?俺は聖の菓子とか生活に必要な物とかだ」
見れば察しはついたが敢えて「ほう」と答えた。

スーパーを出て殺鬼と絆は自宅に向かって歩き出す。
「あれから何か変なことはあったか?」
あれからというのは幸吸引石を殺鬼が持ち帰ってからの事だ。
「いや、あの後は変なことも起きてないな」
その言葉に安堵していると不意に殺鬼が「あ。」と声を出す。
「?どうかしたか?」
絆が殺鬼の方を見て尋ねると。
「アレ・・・」
「アレ?」
殺鬼の視線の先を絆が見ると其処には長髪の少年が倒れていた。
「人が倒れてる」
絆が茫然と呟く。
「取り敢えず安全なところに運ぶか・・・」
絆の言葉に同意するように「そうだな」と言って少年に近づく。

「う・・・・・・ん・・・・・・」
少年が目を覚ます。
見慣れない風景に朦朧と思考を巡らせる。
「此処は・・・何処だろ・・・・?」
虚ろな目を開き辺りを見回す。
「僕は・・・一体・・・」
すると隣から声が聞こえた。
「目が覚めたんだな」
その声に驚き少年の体がビクリと跳ねる。
「え!?」
声のした方を見ると金髪の少年がこちらを見ていた。絆だ。
「よっ」
混乱した少年は絆に尋ねる。
「え、えっと此処は君の家・・・なのかな?」
絆は横に首を振る。
「いや、違うな」
短く答える。すると唐突に言葉を放つ。
「お前、道端で倒れてたんだぞ。」
「え?って事は君が僕を運んでくれたんですか!?」
またも首を横に振る。
「いや、お前を運んだのはこの家の主だ。因みに女だ。」
「え!?」
衝撃的だったのか声をあげて驚く。
「普通女が男を運ぶなんて信じられないけどな。」
落ち着いた様子でそう言う。少年は想像した。
その自分を運んだ少女というのは物凄い筋肉の持ち主ではないのかと。
「え?じゃあ凄いマッチョな人なんですか!?」
思った事をそのまま口にした少年に絆は目を丸くして答える。
「いや、結構スリムだぞ。」
不意に扉をノックする音が聞こえた。
「絆・・・入るぞ」
「ああ」
その時、少年の思考は自分を運んだという少女がどんな姿なのかを想像していた。
(えぇぇ!?スリムなマッチョって一体どんな・・・想像できないよ~
てゆうかそれはそれで怖いよ~!)
少年の心配をよそに殺鬼が部屋に入って来る。
「取り敢えず家にあるものを持ってきた」
「充分だ!」
(え?)
少年の目が見開かれる。
「ん?どうした?」
絆が尋ねる。
「え!?想像と違う!結構細い!!」
「いやだからそう言っただろ・・・」
二人のやり取りが何なの事かは解らなかったが恐らく自分の体格の事を
言っているだろう事は理解出来た。そして少年に冷たく言い放つ。
「お前・・・人の事言えるのか?」
「うぇ!?」
殺鬼は片手に持った盆を机に置くと少年を見据える。
「まぁ、取り敢えず・・・・」
間をおいて盆に載せていたチーズケーキを少年に押し付けて鋭い眼差しと低音で言う。
「先ず、喰え」
「は、はい・・・」
その言葉に少年は大人しく従う。
チーズケーキを食べる少年に絆が質問する。
「-で何であんな所に倒れてたんだ?」
少年は考え込む仕草を見せると暫く考えてこう答える。
「解らない・・・何も覚えてないんだ・・・」
絆は別の質問をする。
「じゃあ名前は?」
「黒羽です・・・だったけ?」
「お前・・・最後のだったけ?って何だ・・・・」
呆れ気味に絆が言うと黒羽はむぅーっと困ったような顔をしてフォークを咥えて考え込む。
殺鬼がふぅと溜息を吐いて絆に視線を送る。
その視線に気づいてか絆が次の質問をする。
「他に何か覚えてないのか?」
黒羽が困ったように殺鬼と絆を見る。
「あの、君達の名前・・・は?」
顔を見合わせて「ああ!」と言って自己紹介をする。
「私は天音殺鬼だ。」
「殺鬼さんって呼んで良いですか?」
「構わない。」
「俺は草凪絆だ。絆で良いぞ。」
「あ、はい。」
自己紹介を済ませると殺鬼は事情を聞こうと口を開く。
「さて、話を戻すか・・・。」
「あ、はい・・・」
さっきの質問の答えを虚ろな思考を巡らせて答える。
「実は僕、猫を探してるんです」
「猫?」
絆が目を細めて訊く。
「猫ってその辺でニャーニャー鳴いてるあの猫か?」
すると黒羽が首を傾げて静かに答える。
「はい・・・でも僕の探している猫は只の猫じゃないんです・・・」
絆が再び黒羽に訊く。
「血統書つきの猫なのか?」
再び首を傾げ、今度はうーんと唸っている。
「まぁ、そんな感じです。」
『そんな感じ』という言葉に殺鬼は違和感を感じた。
それにこの黒羽という少年に対しても少なからず違和感を感じた。
黒羽が不意に震えた声でその猫についてぽつぽつと説明し始めた。
「僕にとってとても大切な猫なんです・・・若し何かあったら僕は・・・僕は・・・」
黒羽の瞳から涙が溢れ出す。
たかが猫如きでこんなに泣くのだろうかと思いながら殺鬼が冷たく言い放つ。
「解ったから泣くなよ。男だろ?」
「す、済みません」
絆が考える仕草を見せて何かを思いついたように二人に言う。
「何なら俺達も猫探すの手伝おうか?」
絆の言葉に涙を拭っていた黒羽の手が止まる。
「え?」
大きな瞳をパチパチと瞬かせながら上目遣いに訊き返す。
「良いんですか?」
「ああ。別に良いぜ。天音も良いよな?」
絆が訊くと短く「ああ」と答えた。
するとまた黒羽の瞳が涙を溜める。
「あ、有難う御座います!」
勢いよくペコリと頭を下げる。殺鬼が溜息交じりに冷たく言う。
「解ったから泣くな」
黒羽が涙を拭い息が落ち着くと殺鬼が腕を組んで猫の特徴を訊く。
「・・・で、どんな猫なんだ?手掛かりがなければ探せないからな。」
すると黒羽がもじもじとしながら殺鬼に訊く。
「あの・・・紙とペンを貸してくれませんか?」
殺鬼の眉毛がピクリと動く。紙とペンをどうするのかそれは大体想像できる。
取り敢えず机の引き出しから紙を一枚とペンを一本取り出して黒羽に渡す。
黒羽がすいすいと紙の上でペンを躍らせる。
それは徐々に形をなし、何を描いているのかハッキリと理解出来た。
「出来ました!」
黒羽が描き終わった紙を殺鬼と絆に見せる。
差し出された紙に描かれていたのはいかにも漫画に出てきそうな緩い猫の絵だった。
「こんなのです!」
黒羽は満足していたが殺鬼も絆も余りの衝撃に黙り込む。
確認の為殺鬼が再度黒羽に尋ねる。
「本当にこんななのか?」
「はい!」
自信満々に答える。さっきまでのオドオドしていたのがまるで嘘のようだ。
絆が二人に言い聞かせるように言う。
「兎に角探そうぜ。此処でこうしてても仕方ないし。
俺、猫の集まりそうな場所幾つか知ってるから其処を探していけば見つかるんじゃねぇか?」
それから絆の言う猫の集まりそうな場所を三人で探索する。
探し始めて30分くらいだろうか。三人が沈黙する。
猫の群れの中に黒羽の描いていた猫が居たからだ。
殺鬼がボソリと呟く。
「・・・居たな・・・」
相槌を打つように絆が「ああ」と答える。
続けて黒羽も消え入りそうな声で「居ましたね」と呟く。
黒羽が探していた猫を見詰ゴクリと喉を鳴らし、深呼吸する。
「と、兎に角、捕まえないと・・・」
「そうだな」
殺鬼と絆が同時に言う。
黒羽がゆっくりと猫に近づく。猫を確り見詰て手を差し伸べる。
「ほ、ほらこっちにおいで・・・」
だが猫はその手が近づくと顔を手に近付けて・・・・
ガブリッ!!
「!?」
黒羽の手に思い切り咬みつく。
みるみる黒羽の瞳に涙が溢れる。そして・・・
「うわ~猫が咬みついて離れないよ~」
とうとう泣きだした。しかも小学生の様な泣き方だ。
絆が大声で「泣くな!!」と言う。
殺鬼が何度目かも解らない溜息を吐いて黒羽に近づく。
「私が遣る・・・」
黒羽は何をするのか理解出来なかったが取り敢えず猫が咬みついている手を差し出す。
殺鬼は一息吐くと目を鋭くし、何時もより低音で猫を睨み据えて口を開く。
「おい・・・」
そして怒りのこもった声と視線で猫を見下して言葉の続きを言う。
「貴様特別な猫だからって調子に乗るなよ・・・・
何より主を見下し咬みつくような馬鹿猫は・・・近い内地獄に落ちるぞ・・・」
殺鬼の言葉と視線に猫の顔が青ざめていく。すると猫が黒羽の手から離れた。
「あ。」
余りにもあっさりだったせいか声が漏れる。
確認するように殺鬼が猫に訊く。
「解ったか?」
猫はこくりと頷く。殺鬼は短く「なら良い」と答える。
絆と黒羽は顔を見合わせて
(何か脅迫みたいで怖いな・・)
と内心怯えたようにそう思っていた。
帰り道、黒羽が絆と殺鬼に礼を言う。
「殺鬼さん、絆さん、今日は本当に有難う御座いました!」
「いや別に良いぞ」
特に何もしてないよなと絆が呟く。
黒羽が広場の時計を見て声を上げる。
「あ、そろそろ時間だ。僕は帰りますね!」
「ああ」
「気をつけてな」
絆の心遣いに黒羽は「有難う」と言って走り出す。

自宅に着く頃には既に日は沈んでいた。
リビングに行き、テレビをつけて夕方のニュースを見る。
やはり学生集団失踪事件の事ばかりが持ち上がっている。
ニュースのアナウンサーが原稿を見ながら視線をこちらに向けて事件の内容を伝える。
『学生が団体で行方不明になる事件ですが、
今日も6名行方不明になり、未だ原因は不明です。』
殺鬼はソファに深く腰掛けてニュースを黙って見る。
『行方不明になった学生は毎回置手紙の様なものを残し、
手紙には不可解な文章を書き綴っています。内容は皆同じとの事です。
内容は「我々は神の愛する楽園へ旅立つ・・・・」。この文章の意味は未だ解りません』
ニュースが終わるとテレビの電源を切り夕飯を軽くすませて事件について考える。
(神・・・・楽園・・・・)
手紙の文章、そして気になる事を考える。
(これは只の宗教団体の仕業じゃなさそうだな・・・少し調べてみるか・・・)
この事件には幾つも不自然な点があった。
それを考えていると不意に呼び鈴が鳴った。
事件の事について考えているのにと思いながらも玄関に向かう。
扉を開くと白いヴェールの様なものと白い服を着た少女が立っていた。
「こんばんは。天音殺鬼さん。私と一緒に来て下さい。」
少女の言葉に不信感を抱いた殺鬼は尋ねる。
「どちら様ですか?こんな時間に・・・・」
少女は少し考えるとふふっと笑って答える。
「私は・・・・そうね、神の使いとでも言いましょうか」
(神の使い・・・・新手の宗教団体か・・・・あるいは・・・・
これは裏があるな。調べてみるか・・・)
そう心の中で呟くと少女に怪しまれないように答える。
「解った。ついていく」
少女は満足げな表情で殺鬼を誘導する。
隣の部屋から扉が閉まる音がして黒寿が殺鬼の部屋の方を見る。
「ん?殺鬼こんな時間に外出?惨劇は無いのに・・・」
するとある事が黒寿の脳裏を過る。
(まさか殺鬼の奴あの事について調べに行ったのか・・・?)
死神の勘がそう言うのか黒寿は殺鬼の後を付いていく。

自宅を出て街灯のない裏道を歩く。
もう何時間歩いたのかさえ解らない。そもそもこんな道があったかさえ怪しい。
近くにチラッと見えた時計に視線を移す。
(3時か・・・)
気が付けば日が変わっていた。少女は無言で歩き続ける。
(-コイツ・・・人間じゃないな・・・怨霊でもない・・・
学生集団失踪事件と何か関かわりがあるのか?)
だが察しはついた。少女が口にした『神の使い』という言葉。
それは恐らく本当の意味での『神の使い』という事だろう。
ならば少女は天使だ。学生集団失踪事件の主犯だろう。
だがここで疑問が浮かぶ。何故天使が人間の子供を消すのか?
黙って付いていくと森の中にひっそりと佇む教会があった。
少女は教会の扉を静かに開く。
(若しコイツが天使なら私を殺す筈だ・・・・)
そう考えていると不意に少女が口を開く。
「着きました」
教会の椅子には制服を着たままの学生が座っていた。
それは教会の椅子を埋め尽くしている。失踪した学生だろう。
「さぁ皆さん今日も神に祈りを!そして心清らかに!そうすれば皆救われるのです!」
少女がそう言うと学生たちは手を合わせブツブツと何かを呟き始める。
それは言葉なのか聞き取れない。少女は指を振り宙に線を引く。
(これは・・・・歌?)
「聞えるかしら?彼らの歌が」
少女が殺鬼に歩み寄る。そして被っていた白いヴェールの様な物を脱ぎ捨てる。
白く、長い髪、中央分けされた前髪からハッキリと顔が見える。
大きな眼に白い肌、青い瞳。
「この歌は真実の歌・・・嘘、偽りを暴き消しさる力があるの・・・
それが例え死神だったとしてもね!」
少女の言葉とともに殺鬼の体から黒い霧の様なものが噴き出す。
「今貴方の心の闇が貴方の中から出てくるのが解る・・・・
こうやって心の闇を出して消すのが私達天使の仕事!」
「やはり天使だったか・・・・」
特に焦りもせずそう言う。天使は満面の笑みを浮かべて言う。
「うふふ解っていて敢えて付いてきたという訳ね。でも此処は私にって有利な場所」
天使のその言葉に眉間にしわを寄せる。
不意に背後から蔓が腕と足に絡みつく。対応が遅かった所為か避けられなかった。
「くっ!」
腕と足を勢いよく引っ張られ磔にされ、苦痛の声が漏れる。
天使は殺鬼のその様子に満足げに笑う。
「ふふ、それは人間の負の感情が生み出した悪意の蔓。
貴方の闇を取り込むまで外れないわ。」
殺鬼は目を細めて天使を見詰る。
「成程・・・人間の感情を利用して死神を消すというわけか・・・」
「利用だなんて人聞きの悪い事言わないで欲しいわ」
天使が殺鬼に手を差し伸べ、殺鬼の頬を撫でる。
「人間の悪を消すにはこの方法しかないの・・・それに消える前に使えるなら
使ってから消した方が良いでしょ?」
すると天使の手が殺鬼の頬を滑り、殺鬼の首に着いた首輪に触れる。
首輪に指を通しそれを外そうと引っ張ろうとする。
「天音さん・・・貴方も死神なんて辞めて私達の仲間になって?
貴方はそちら側に居るべきじゃないの」
瞬間天使の手が払われる。黒衣の翻る音とともに。
「!?」
一瞬の事で天使には理解出来なかったが、
殺鬼は空を切るように黒衣をそこから引き出しその身に纏った。
以前黒寿に自分の意思で黒衣が出現するという事を教わった事もあり
実践してみただけだったが思ったよりも簡単な事だった。
黒衣同様に愛用している日本刀も出せるだろうと腰から日本刀を抜く構えをすると
まるで最初から其処に在ったかのように日本刀が姿を現す。
「生憎、私は死神になった事を後悔してないんでな。そちら側に行く気も無い・・・
この首輪は黒寿との契約の証・・・・それは絶対に他人に切り離す事の出来ない絆だ。
それを引き裂こうとする者は誰であろうと斬る!」
その言葉に天使の表情は失望感に満ち、小さく溜息を吐いた。
「そう・・・それは残念・・・。まだ悪に染まってなかったから
仲間になってくれると思ったのに・・・」
天使は光のない目で殺鬼を睨み据える。
「貴方がそこまで言うのなら仕方ありません。仲間にならないのなら死んで下さい!」
すると天使の背から白く大きな翼が広がる。
「仲間にならなかった事を後悔するがいい!」
再び天使が歌う。すると周囲から蔓が伸びてくる。
さっき不意を突かれただけに警戒はしていた。
今度はその蔓を持っていた日本刀で切り裂く。
すかさず天使が蔓に紛れて羽を飛ばしてくるがそれも払いのけ、
天使めがけて踵を返して跳ぶ。
「くっ」
避け切れない事を想定し結界を張る。一撃を弾き返され殺鬼が日本刀を自分の方に引く。
そして今度はさっきよりも勢いをつけて一突きする。
「!?」
結界が崩壊し始め、天使は動揺する。
「しまっ・・・」
言葉を言う前に横腹に日本刀がめり込む。
「動くな。少しでも動けば今度こそ斬るぞ。
斬り殺されたくないなら大人しく私の質問に答えろ。」
天使は額から流れる汗と腹の痛みに表情を歪めて答える。
「―・・・解りました、質問に答えましょう・・・・」
殺鬼は天使の眼をじっと見つめる。
「何故人間の子供を攫った?」
苦しげに天使は答える。
「彼等を・・・救う為です・・・」
殺鬼の片眉がピクリと動く。
「救う・・・だと?」
こくりと天使が頷く。
「ええ・・・人間は皆善と悪の両方を持っています。
けれど人間の殆どは悪に染まっています。」
天使が悲しげな顔をする。殺鬼は相変わらずの無表情で天使の言葉を聞く。
「神は嘆きました。御自分の創り上げたモノが闇に呑まれる事を・・・
だから私達は人間の闇を消しているのです・・・」
天使が話し終えると殺鬼は静かに頷く。
「成程な・・・だがこれは・・・何の真似だ?」
気付くと何時の間にか殺鬼の周囲に巨大な杭の様なものが浮いている。
天使はさっきまでとは打って変わって笑いだす。
「ふふ。私がこの程度の傷で困ると思います?」
するとさっきまで血を流していた腹部がみるみる傷を癒やせれていく。
日本刀を引き抜こうとするが天使の腹に固定されていて抜く事が出来ない。
「言ったでしょう?此処は私にとって有利な場所だって・・・」
「!?」
殺鬼の脳内でその言葉の意味を理解しようと思考が巡る。
急速再生能力・・・そんな事がリスクなしで簡単にできるものだろうか?
疑問を抱きある事に気付く。
「此処は私の空間・・・どんな傷を負っても直ぐに治せるの。天音さん、サヨナラ」
その言葉とともに大量の杭が刺さる音がする。
「な!?」
無数の杭が射抜いたのは天使の体だった。
(くっ!如何いう事!?何故私に刺さってるの?)
殺鬼の姿が視界から消えていた事に焦りながら傷を癒やす。
すると頭上から声が降って来た。
「お前の言う自分の空間は空間を作る時自分の
『身代り』を置かなければならないのだろう?」
殺鬼はステンド硝子の傍の蝋燭を置く為の狭いスペースに立っていた。
その手に握られていたのは一本の蝋燭。蝋燭にはまだ灯が点っていた。
「お前の『身代りはこれの中にあるんだろう?
これを破壊すればもう簡単に治癒能力も使えないだろ。違うか?」
殺鬼の推測に天使の表情が歪む。
「な!?」
殺鬼は確信したように眼を細め冷めた目で天使を見下す。
「図星のようだな。さて、壊すか」
「や、やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
天使の絶叫など気にもせず握りしめた蝋燭をより強く握る。
蝋燭を握る手に力が集中する。するとそれは呆気なく砕けた。
瞬間天使の中で何かが音を立てる。
「うっあっうあああああああああああああああああああああああ!」
天使は自分の体を抱きながら悶える。
「うっくはっうあ・・・」
天使の口から大量の液体が吐きだされる。
嘔吐物に服や髪を汚し、口元を必死で抑える。
「うっあうううぐっはぁ・・・」
息苦しそうに呻く天使の様子を見て天使のいる所まで降り立つと
天使の腹に刺さったままの日本刀に手をかける。
「返して貰うぞ」
その一言にぞっとした天使は殺鬼に視線を移す。
だが勢いよく引き抜かれた日本刀が腹部を抉る衝撃で絶叫する。
「うっあっがああああ!キャーーーーーーーーーーーー!!」
日本刀には天使の鮮血が滴り落ちる。
殺鬼は天使を見下してこう告げる。
「無様だな・・・天使・・・・あれだけ自信満々だったのが今ではこれだ。
己の力に溺れ、相手を舐めていた者だという証拠だ」
言い終わると日本刀を振り上げて一言。
「さて、止めを刺すか・・・」
天使は既に虫の息だった。虚ろな目は抵抗をする気力がない事を物語っている。
が、今度は別の気配を感じてその場を離れる。
教会の扉を強引に開くと其処には黒く巨大な猫が立っていた。
「何だ・・・コイツは・・・」
天使の仲間だとも思ったがそうではないと理解する。
あの巨大な猫は人間の負の感情で出来ている事に気付く。
猫が片手を振り上げ殺鬼を襲う。凄まじい破壊力だ。
まともに食らえば致命傷には確定だろう。
(今、天音さんがあの化け物と戦っている内に逃げないと・・・)
殺鬼が天使の不穏な行動に気付き天使の方を振り返る。
すると天使は消えていた。
(チッ!逃げられたか!)
すかさず背後から猫の一撃を食らうと思い急いで構えるが間に合わない。
「しまっ・・・」
攻撃を受けるかと思っていたが猫の動きが止まる。
猫の頭に何かが刺さっている。其処から電気に似たものがバチバチと音を立てる。
猫の表情が苦痛に歪む。
「もう、また暴れて・・・・食べ過ぎは駄目だって何時も言ってるのに・・・
こんなに大きくなって・・・仕方ないね」
瞬間、猫の頭に刺さっていた物が引き抜かれそれが猫の体を切り裂く。
猫はみるみる歪み、蒸気のように消えていく。
声のした方に視線を移す。
「これで一つ、問題解決したね・・・・それにしても闇猫が此処まで大きくなるなんて・・・」
その姿に見おぼえがる。長い髪、大きな眼、色白で細い体・・・
「お前、死神だったのか・・・黒羽」
それは間違いなく昼間猫探しをしていた少年、黒羽だった。
「はい、僕は死神です。殺鬼さんも死神だったんですね」
黒羽は申し訳なさそうな表情で殺鬼を見詰る。
「あの・・・さっきは僕の猫が迷惑をかけてしまって・・・御免なさい・・・」
「ああ・・・だがあの巨大な猫は一体何だったんだ?」
すかさず問いかける。
「・・・あれは僕の飼っている猫なんです。」
「猫?昼間捕まえた奴の事か?」
「はい。あの猫は昼間捕まえた猫です。僕の飼っている猫は只の猫じゃないんです。
僕の家は代々死神業をしていて人間を死の世界へ誘ってきました。
それが僕等の仕事だから・・・・。でも僕の家族は皆動物を召喚して仕事をするんです。
召喚獣は人間の幸を食べて不幸に変換して再び人間に返す・・・・
そして人間から出る負の感情を食べて成長するんです。
これを繰り返すことで人間の憎しみの連鎖は終わらないんだ」
長々と説明したかと思うと今度は悲しげな顔で言う。
「-でも・・・召喚獣が人間の負の感情を食べ過ぎると
さっきみたいに急成長して暴走してしまうんだ。
召喚獣が暴走した場合、速やかに主が処分しなくてはならないのです。
でも僕はあの子たちを殺したくない・・・」
その言葉に殺鬼が答える。
「お前、優しいな。死神じゃないみたいだ。」
黒羽は困ったような笑顔で答える。
「あ、良く言われます・・・・」
すると黒羽が或る事に気付く。
「それ・・・・・」
それとは殺鬼の黒衣の袖から覗く幸吸引石の事だ。
「それ、若しかして幸吸引石?」
「ああ。これお前のか?」
「そうです。実は人間界に来る途中に落としてしまって・・・・」
「成程な。これは返す」
「有難うございます」
黒羽は何度もお礼を言った後殺鬼を見詰て言う。
「それじゃ僕は帰りますね。帰る時は気をつけてください」
「ああ」
すると森の方から影が見えた。
「あれ?何で黒羽と殺鬼が一緒に居るの?」
黒寿だ。黒羽が目を見開いて言う。
「-黒寿・・・」

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