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日々の出来事等を徒然と。偶に鬱状態になるので御注意下さい。   
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泡海ヶ原学園、屋上。
午前中の授業を終わらせ昼食を摂ろうとした殺鬼に女生徒が話しかけてきた。
その所為で殺鬼の機嫌は悪かった。
何故屋上に連れてこられたのか・・・良い迷惑だ。
「何の用だ?そろそろ出て来たらどうだ?」
殺鬼の言葉を聞いて物陰から少年が現れる。
身長も低く年齢は小f学生くらいといったところか。
「天音殺鬼さん・・・・だよね?」
少年が尋ねる。
「そうだ。」
殺鬼の機嫌など気にも留めず少年は続ける。
「君に話があるんだ~」
言い終わらない内に殺鬼が少年に訊く。
「-お前、何者だ?何故私を知ってる?・・・・・・・・お前は、人間じゃないな。」
殺鬼の質問攻めに驚いたのか少年はきょとんとしている。
そして口元を綻ばせて答える。
「御察しの通り、僕は人間じゃない。君と同じ死神だ!」
「・・・・・・」
無言の殺鬼の反応に少しムッとする。
「そんな怖い顔しないでよ~仲間でしょ?」
少年はふと「あ!」と声を上げて明るく殺鬼に訊く。
「あ、そっか~僕が名乗らないから怒ってるんだよね。
それなら自己紹介するね!僕は覇月心!宜しくね★」
心は殺鬼に自己紹介すると殺鬼に近付く。
不意に殺鬼が口を開く。
「お前・・・・何時から居た?」
殺鬼が心の目を睨む。そして続ける。
「朝、学校に着いた途端妙な気配を感じたが・・・それがお前か?」
心は驚いた様な表情をする。
が、それは一瞬で消え、不気味な笑みを浮かべながら
声を落ち着かせ殺鬼に言う。
「ふ~ん・・・気付いてたんだ・・・へぇ、凄いね~」
その言葉は挑発的で人を小馬鹿にしたような言い方だった。
殺鬼の眉間に皺が寄る。
心は屋上の柵に背を預ける。そして続ける。
「僕は、触れた人間を洗脳出来るんだ。
彼女が協力してくれた御蔭でこうして君を此処まで連れて来られたんだよ!」
心は無邪気に笑う。だがその無邪気な笑みが消える。
代わりに不気味な笑みを浮かべて呟いた。
「でも・・・・もう要らない・・・要らないモノは捨てないとね・・・」
そう言って少女の瞳を見詰める。
するとさっきまで其処で立ち尽くしていた少女がぎこちない動きで歩き出す。
少女が動く事を確認すると心が屋上の柵の外を指さす。
そして少女に手招きする。殺鬼は現状を驚いた眼で見る事しか出来ない。
嫌な予感がしたのか殺鬼が叫ぶ。
「貴様!何をする気だ!?」
殺鬼の問いかけに心はニッコリと笑って答える。
「捨てるんだよ!」
その言葉が合図だったかのように少女は心が指さす其処へ歩を進める。
そして屋上の柵を上ると虚ろな目で其処から飛び降りた。
グシャ!
肉が潰れる音。学校中の生徒、教師が音のした方を見る。
其処にはさっき飛び降りた少女の無残な姿があった。
頭から落ちた所為で脳が潰れ、目は飛び出し、顔は原形を留めていなかった。
体は形こそ残ってはいるがグチャグチャで血に塗れ(まみれ)ていた。
「キャー!人が死んでる!」
「誰か!早く救急車を!!」
「もう死んでる!救急車より警察だ!」
生徒や教師の混乱の声。その様子を見て心が笑う。
「あははは!見事に潰れたね~」
殺鬼は心の言葉には答えず、少女の無残な姿を見ていた。
あの時、洗脳されていたとはいえ少女が飛び降りる瞬間に言った言葉・・・
少女は涙を浮かべてこう言っていた『サヨナラ』と・・・
心が殺鬼の方を向く。
「さて、本題に入ろうか」
殺鬼が心を睨む。
「何故彼女を殺した?」
殺鬼の問いに心はふふふと笑った。
「愚問だね・・・・彼女の死を哀しむ事なんて無いのに。
だって、彼女は僕が手を下さなくても勝手に自殺してたさ。
クラスの奴が皆して彼女を苛めて、誰も彼女を助けてくれないんだ。
只見てるだけ・・・そんな苦しい思いをするくらいなら消えてなくなった方がマシだ。
いっそ死んだ方が楽なんじゃないかって・・・・
だから死ぬ前に僕が利用してあげたんだ!」
心が楽しそうに殺鬼に話す。まるで目標を達成した子供の様に。
が、それも矢張り直ぐに消え失せた。
「人間って、馬鹿だよね~?何処に行っても在るのは憎しみの連鎖だけなのに。」
確かに、この世界は幸福と不幸の二つで構成されていて、
幸福の裏には哀しみ嘆く人間も少なからず居るのだから。
犠牲なくしてこの世の幸福は得られない。
ならば犠牲にされた者はまた他の人間を犠牲にして
幸福を手に入れる事になるだろう。
それは自然の原理であって人間がどうこう出来るものじゃない。
犠牲なしで得られるものなど何一つ無いのだから。
そういう意味では同意だが、心の次の言葉でそれも無くなる。
「だから殺鬼は人間を辞めたんでしょ?13歳の誕生日の日に・・・」
クスッと笑う心に近づき、心の胸倉を掴む。
「貴様、調子に乗るなよ・・・用があるならさっさと言え!」
殺鬼の怒りを含んだ言葉に一瞬表情を曇らせるが直ぐに笑みを浮かべる。
「あはは!そうだったね!御免御免★」
そう言って殺鬼の手を振りほどく。
腕組みをし、人差し指を顎に突き片目を閉じて殺鬼に言う。
「実はね真龍が君と話したいんだって!
だから学校が終わったら僕が来るまで待っててね!
・・・若し先に帰ったりしたら・・・・殺鬼の大切なモノを壊すからね・・・」
唐突に目を細め、殺鬼を見据えそう言い放つ。
殺鬼は半ば呆れたように溜息を吐いてこう言う。
「つまり強制という訳か。」
「あはは!言われてみるとそれもそうだね!
でも約束さえ守ってくれたら何も酷い事しないよ!」
満面の笑みを浮かべ、心が言う。
そして柵の方を向くと・・・
「さて、僕は一旦帰るよ。じゃあまた後でね!殺鬼★」
そう言って心は空気に溶けていくかのように消えていった。
黒寿がそうするのを一度見たことがあるせいか殺鬼は特に驚きもせず、
その場を去って行った。

階段を下り、廊下を歩いていると後ろから声がする。
黒寿だ。こちらに向かって駆け寄ってくるのが解る。
「殺鬼!何処行ってたの?探したんだよ~」
「一寸屋上に行ってた」
黒寿が一瞬驚いたような表情をしたが直ぐにそれは消えた。
そして呆けたように言う。
「へぇ~屋上で日光浴してたのか!」
半ば呆れ気味に殺鬼が答える。
「・・・してない・・・」
「でも他に遣る事無いでしょ?」
やけに呆け気味の黒寿に屋上で何をしていたのかを話す。
「死神だ・・・死神の子供と放課後会う約束をしただけだ。」
殺鬼の意外な言葉に目を丸くして黒寿が言う。
「へぇ。死神の子供と約束したのか。」
間を置いて黒寿が思い出したように言う。
「でもまぁ、死神として新しい人生を歩むなら死神友達作らないとだもんね~」
(新しい人生?死神友達?)
殺鬼の中で死神に人生だの友達だのという言葉が飛び交う。
死神に人生だとか友達だとか、そんなものが存在していたという事に内心驚く。
「まぁ、頑張れ★」
そう言って黒寿が殺鬼の肩を叩く。
取り敢えず「ああ」とだけ答えておいた。
すると黒寿が携帯電話を取り出した。
黒寿が殺鬼に背を向けて携帯電話を耳元まで持ってくる。
背を向けたまま黒寿が殺鬼に言う。
「僕の従兄弟を紹介してあげるよ♪」
(別に良い・・・)
心の中でだけそう呟くと一息おいて言葉を返す。
「先に戻るぞ」
「うん!解った!」
元気のいい声で返された。
殺鬼の中で一つの疑問が脳内を占めていた。
授業中も、掃除時間も放課後まで心の言う自分の大切なものについて考えた。
だがそれが何なのか、結局答えは解らないまま放課後を迎えた。

放課後、生徒たちが次々に帰宅したり、各々の部活に向かっていた。
殺鬼は心との約束の為教室に居残った。
教室の窓から外の様子を一人見下ろす殺鬼の背後が光る。
何が起こったのかと振り返ると其処には二つの影が映し出された。
「やぁ殺鬼、待たせたね」
心の声だ。だが心の他にもう一人、少女が居る。
少女は無言で心を御姫様だっこしている。
その可笑しな光景に殺鬼が当たり前のように問う。
「・・・何でお前はそんな体勢なんだ?」
心がああ、と言って殺鬼の質問に笑顔で答える。
「ああ、これ?この体勢、楽だから・・・つい、ね★」
殺鬼が溜息交じりに「普通逆じゃないのか?」と呟く。
心が自分を抱く少女の頬に手を当て、愛おしそうに撫でる。
「紹介するよ。彼女は僕の双子の姉の心愛だよ!」
心の言葉に反応するように心愛が口を開く。
「・・・宜しく・・・」
心とは対照的に静かで落ち着いた声だった。
外見は同じなのに性格は真逆だ。落ち着いた姉と小五月蝿い弟。
殺鬼が心愛の方を向く。
「こちらこそ・・・宜しく」
すると体勢はそのままの状態で心がカードを取り出した。
それは真っ白で何も書かれていないものだった。
「さぁて自己紹介も済んだ事だし、そろそろ行こうか。」
心がそう言うと白いカードが光り出す。
その瞬間光で満ちた教室から三人の姿が消えた。

ふんわりとした感触で目が覚める。
「・・・此処は・・・・?」
どうやらベッドの上らしい。
上体を起こすと直ぐ傍の椅子に黒寿が座っていた。
「おや、起きたみたいだね」
殺鬼は黒寿が此処に居ることに疑問を抱き、黒寿に訊く。
「黒寿・・・何故お前が此処に居る?」
「あー、実は真龍と僕は幼馴染なんだ。今日は真龍に呼ばれたから来たんだよ。」
ということは此処は真龍の家という事になるのだろう。
「成程、あの光は私達を瞬間移動させたというわけか・・・」
「正解!」
「・・・・。」
黒寿が元気にそう言うと殺鬼は黙り込んだ。
「まぁ少し待ってればあいつ等も来るだろうから待ってよっか。」
黒寿がふぅと一息ついた時だった。
不意に殺鬼が黒寿に自分の中で渦巻く疑問を投げかけた。
「黒寿・・・お前には大切なモノがあるのか?」
一瞬の沈黙。だがそれを破ったのは黒寿の方だった。
「殺鬼は変な事を言うね。大切なモノか~そんなモノ、今はもう無いね」
此処でまた一つ疑問が浮かぶ。
(『今はもう』・・・という事は昔は大切なモノがあったのか・・・・・)
扉にノック音が響く。
殺鬼と黒寿が扉の方を向くと真龍の声がする。
「黒寿~入るよ~」
そう言って扉が開く。真龍の他に心愛と心が一緒に入って来る。
「ようこそ、天音さん。良い夢は見られたかしら?」
殺鬼が不機嫌そうに声を低くして答える。
「夢なんて見てない。大体此処に来たのは強制されたからだ。
まぁ、そんな事は動でも良い。話とは何だ?」
急かすように殺鬼が言うと真龍がふふっと笑って椅子に座った。
「この子たちの事だけど、訊いたかしら?」
「名前は訊いた。」
真龍が一瞬詰まらなそうな表情をしたがまた一瞬で笑みを浮かべる。
「そう、じゃあこの子たちの能力はまだ御存知ないようね」
「能力?」
殺鬼が首をかしげて考え込む様子を心が嬉しそうに見ている。
「僕たちの能力、知りたい?」
心の瞳が輝いている。そんなに知ってもらいたいものなのだろうか?
だが殺鬼の返答を待たずに心が話し始める。
「僕はね、人間の精神を刺激して操ることが出来るんだ!でも安心して!
利用する人間は皆死が目前の奴ばっかだから問題にはならいんだ!」
得意げに自分の能力について説明する心に半ば呆れていると
心がまた新たに説明を始める。心愛の能力についてだ。
「心愛はね、動物や植物、人間の心の声が読めるんだ!
だから今何考えてるのかとか直ぐに解るんだ!」
心が心愛に身を寄せて説明を終えると真龍が付け加えてこう言った。
「そう、心愛と心は二人揃ってこそ本来の力を発揮する。
私自慢の天才姉弟なのよ!」
天才と言われてか、心がへへっと笑っている。
心愛は相変わらずの無表情だ。
「・・・で話はそれだけか?」
殺鬼の表情が少し曇っているのを見て真龍が慌てて本題に入る。
「そう怖い顔しないで。さて本題に入りましょう」
真龍が一息置いて話し始める。
「さて、天音さんは死神とは何なのか解りますか?」
殺鬼が溜息交じりに答える。
「人間の惨劇の処理と不幸の回収」
「その通りですわ!でも・・・」
真龍が再び一息置いて続ける。
「惨劇は処理しても生まれ、不幸は回収しても溢れる・・・
それは人間が『希望』という消えてしまいそうなチャンスを掴もうとするからよ。
そしてそれは永遠に与えられ続け、人間はそれを永遠に求め続けるわ。」
「与える者・・・天使か?」
「そう。天使は人間に幸福を与え、失くしてしまえば今度は希望を与える。
まぁそれが仕事なんですけどね・・・。」
此処で真龍の表情が曇る。
「奴等は神の命令さえあれば私達死神までも消しに来るわ。」
真龍が腕組みをし、目を細めて続きを言う。
「勿論、奴等が攻撃をしてきたら私達も戦うわ。
でも奴等は死神が一人になった時に襲ってくる・・・それも集団で・・・。
幾ら私達の方がランクが上でも油断すれば消される・・・・」
間をおいて真龍が黒寿を指さして言い放つ。
「つまり、一人暮らししている死神は直ぐに標的にされるって事よ!
だから黒寿は天音さんのアパートの隣部屋に住んでね。」
真龍の唐突な提案に目を見開き思わず「え?」と声を漏らす。
「え?じゃないでしょ!契約者を守るのも仕事でしょ!
大体女の子を守るのは男の子の役目でしょ?」
黒寿の抗議の隙も与えず真龍の止め(とどめ)の言葉が突き刺さる。
「それに住む所ちゃんと決めないと仕事に支障が出るでしょ?
そんなんじゃ御姉様やお母様に叱られて家から追い出されちゃうわよ?」
言葉に詰まった黒寿が複雑な表情で殺鬼を見る。
殺鬼が微妙な表情で真龍に問う。
「話というのはそれだけか?」
「ええ。今日はもう遅いですし、帰ってくださって構わないですよ?」
「そうか。」
そう言って殺鬼はその場を後にした。殺鬼の後を黒寿も付いていく。

殺鬼がアパートの空き部屋はないか
管理人に尋ねるのを黒寿は扉の傍で見届けていた。
このアパートは住人がまばらに住んでおり、
此処に住みつく人はあまりいない。
人混みが嫌いな殺鬼の為に父親が用意した
殺鬼にとって都合のいい場所だった。
殺鬼が管理人と交渉を済ませると黒寿をその部屋まで案内した。
「手続きは済んだ。丁度隣の部屋が空いていたから
其処に住むと良い・・・だそうだ」
「ん、有難う!」
案内された部屋に辿り着くと黒寿は満面の笑みを浮かべて殺鬼を呼ぶ。
「殺鬼!手続き有難う!また明日ね!」
「ああ、また明日な。」
素気なく返し、自分の部屋に入ろうとすると不意に何かが見えた。
嫌な予感がして再びアパートを後にする。

泡海ヶ原公園の裏道、二つの影がある。
一つは横たわる影に何かを振り翳し何度も突きたてる。
「誰ガ私ヲコワシタノ?」
振り上げたそれは銀色に輝いていたが赤黒い液体で鈍く光っていた。
「ネェ誰ガ私ヲ壊シタノ?」
返答のないただ横たわるだけの体に何度も鋭い光を放つそれを突き立てる。
「訊いても無駄だ・・・もうソイツは死んでいるからな。」
黒衣を纏った殺鬼が現れた。刃物を突き立てる少女に近づく。
「やはりこの世に未練があったようだな・・・・」
少女は殺鬼の方を振り返る。
その少女は今朝屋上から飛び降りさせられた少女だった。
この世に未練のある怨霊と化した少女は殺鬼に静かに言葉を返す。
「死神・・・・サン?」
怨霊の少女は立ち上がると殺鬼の方に向かいなおして殺鬼に問う。
「何故コンナ時間ニコンナ所ニ居ルノ?」
「・・・・お前を迎えにきた」
「迎エ?」
「そうだ。お前は既に死んでいる。だから迎えに来た。」
その言葉を訊いた怨霊の少女が顔を伏せて震える声を絞り出して呟く。
「・・・・ソウ・・・・ヤッパリ私・・・死ンダノネ・・・」
少女のナイフを握る手が震える。声も同調するように震える。
「何モカモ解ラナイママ・・・・」
少女は両目から赤い涙を溜めて殺鬼に不安そうな表情で尋ねる。
「死神サン・・・・私ハ・・・・生マレ変ワッタラ・・・・幸セニナレル・・・カナ?」
「・・・・・・・。」
その問いに殺鬼は黙り込む。
数秒考えた後相手を落ち着かせるように問いに答える。
「ああ・・・今回は駄目だった分、きっと幸せになれる。だから私と来い。」
そう言って少女に手を差し伸べる。
少女はやはり不安なのか半信半疑で再度尋ねる。
「本当・・・デスカ?」
「ああ」
短く答えると今度は相手に誘導するように言う。
「私の手をとれ。」
少女は疑うことを止めた(やめた)のか「ハイ」と返事をして殺鬼の手をとろうと
小刻みに震える手を重ねようと近づける。
二人の手と手が触れ合おうとするまさにその時だった。
「甘いね」
「!?」
背後から声がして少女から気をとられたのが間違いだった。
空気を突く音が聞こえた。それは少女の脳を貫通していた。
頭蓋骨を見事に貫き、脳を抉るそれは一般家庭に置いてあるフォークだった。
普通のものと違うのはそれが異常に巨大である事だった。
少女がカタカタと壊れた薇仕掛けの人形のように震えだす。
「何・・・コレ・・・・?痛イ・・・痛イヨ・・・」
少女は殺鬼に助けを請うように手を伸ばす。
殺鬼は硬直した状態で少女を見る事しか出来なかった。
「痛イ・・・死神サン・・・助ケテ・・・」
ピシピシと少女の顔や体に罅が入る。
少女は声を発することも出来なくなったのか
口をパクパクと動かしてこちらを見詰める。
もう何を言っているのかすら解らない。
口を動かせば動かすほど罅が入り、そしてそれは脆く壊れた。
硝子を割ったような音が辺りに響き渡る。
それを見届けた殺鬼が後ろを振り向く。
「くくく・・・あの人間の怨霊の顔・・・
死んだ後なのに命乞いするなんて馬鹿だよね~」
その声には聞き覚えがあった。
「それにしても殺鬼は優しいね。相手はもう死んでるのに・・・・
黒寿と契約するくらいだから直ぐに消すかと思ったけど・・・」
「いい加減そのお喋りな口を閉じたらどうだ?心・・・」
それは夕方会った双子の弟、心だった。
「こんばんは、殺鬼。」
殺鬼の声が低くなる。
「貴様・・・あの子は大人しく私と死後の世界に来ようとした・・・・
お前は無抵抗の相手を斬殺して楽しいのか?」
心は巨大なフォークを一振りして殺鬼に微笑む。
「うん!楽しい♪」
その答えに殺鬼の中で何かが切れる音がした。
「お前とは気が合わないようだ・・・」
低く冷たく呟くと心は再び笑みを浮かべて明るく言う。
「アハハ!何でそんな事言うの?僕達は死神同士で仲間なのに~」
その言葉に反応するように殺鬼が
黒衣に隠された日本刀を心の首筋に当てる。
少し動かせば切れてしまいそうなほどに距離を詰めて。
「これ以上言うと斬るぞ・・・」
殺鬼のその言葉に少し驚いたような顔をするが口元が笑みを作る。
「ふふ・・・そんなに怒らないでよ。そんな事されたら・・・」
言い終わらない内に何かの物音がしてそちらに日本刀を一振りする。
金属が触れ合う、冷たい音が響く。
「くっ」
それは心が持っていた巨大なフォークだった。
反応が遅れていたなら今頃脳天が砕けていただろう。
心が不気味な笑みを浮かべて言う。
「殺したくなっちゃうよ」
心の瞳は狂気に満ち巨大なフォークをブンブンと振り回す。
そして互いに身構え刃を交えようとした時だった。
ガッシャン!
「其処までだ」
日本刀とフォークを片手で受け止め、心愛が言う。
何時の間に現れたのか?
「心愛!?」
心が焦ったように呼ぶ。
「心、悪巫山戯が過ぎたようね・・・」
「退いて(どいて)よ!ここからが本番なんだから!」
駄々をこねる子供のように心愛に抗議する。
だが心愛はそんな事など気にも留めずに言う。
「なら明日のオヤツは無しね」
その一言に妙に焦り出した心が急いでフォークを引く。
「わ、解ったよ!帰れば良いんだろ!!」
「そう」
姉弟というよりもそれは親子のようなやり取りだった。
殺鬼はその様子を黙って見ていた。
心愛が心の手を引き、すぅと消えていく。
そして心愛が消える直前に殺鬼に一言だけ言う。
「迷惑、かけたな・・・それじゃあまた・・・」
「ああ」
殺鬼はふぅと溜息を吐きながら自宅に向かって歩き出す。

家のベランダに飛び移ると窓を強引に開け、自室に入る。
汗をかいてしまった為軽くシャワーを浴びて
髪を結んで自室のベッドに倒れこむ。
殺鬼が眠りにつくと自室の窓があく。
「お仕事、お疲れ様。お休み、殺鬼」
黒寿だった。
そう言って安心したように黒寿は自室に戻った。

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