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日々の出来事等を徒然と。偶に鬱状態になるので御注意下さい。   
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朝日が昇りかけた教会の前に三つの影が立っていた。
「何で殺鬼と黒羽が一緒に居るの?」
「黒寿・・・」
黒寿が殺鬼と黒羽に投げかけた問い。
殺鬼は表情を曇らせて言う。
「お前の方こそ何故こんな所に居る?大体何故黒羽の事を知っている?」
黒寿の質問には答えず質問し返す殺鬼に困った表情をして黒寿が言う。
「此処に来たのは殺鬼が天使と一緒に出かけたから気になってね・・・
後黒羽の事に関してだけど僕と黒羽は従兄弟なんだ」
「従兄弟・・・成程な・・・」
殺鬼はある事を思い出した。
以前黒寿が殺鬼の為に従兄弟を紹介するといって電話していた時の事だ。
つまりあの時の電話の相手は黒羽だった事になる。
「あの時、お前は黒羽に電話していたんだろう?」
殺鬼の答えに満足したのか黒寿がふふっと笑う。
「その通りだよ殺鬼。殺鬼に死神友達を作って欲しかったから
黒羽に電話したんだけど・・・」
黒寿が楽しそうなのとは対照的に黒羽の表情が暗くなる。
「でも僕が人間界に来る途中幸吸引石を落してしまって・・・・
おまけに幸吸引石を探す為に召喚した猫も逃げるし・・・・
猫を探してたら何故か途中から記憶が途切れちゃって・・・」
(倒れてたからな)
心の中で呟くと黒羽の瞳が見開かれる。
「黒寿から人間界に来ないかって電話がかかって来た時は嬉しくって・・」
「つまり浮かれていたのか」
殺鬼に痛いところを疲れてうっと唸る。
それを中和するかのように黒寿が笑顔で二人に言う。
「でも落し物も見つかったし、猫も捕まえられて良かったじゃん!」
黒羽を宥めるように言うと不意に黒寿が言った。
「そういえば黒羽、住む所あるの?」
「・・・・無い・・・」
黒羽が困ったように言うと殺鬼が仕方ないと呟く。

「-という訳で此処に住みたいという奴が来たんだが、大丈夫か?」
殺鬼は以前と同じ事を管理人に言うと管理人は「勿論です!」と答える。
鍵を貰うと殺鬼は黒羽を指定された部屋に案内する。
「此処だ。今日から此処がお前の家だ。」
「あ、有難うございます!」
黒羽に部屋の鍵を手渡すと殺鬼と黒寿は自分の部屋に向かう。
部屋の扉を開いてから黒寿が二人に言う。
「それじゃ、御休みなさい。」
「ああ」
「ん、御休み~」
二人からの返事を聞くと自分の部屋に入る。
初めて入る人間界の建築物の一角。
死神界とそんなに大差はないのだが心は揺れている。
「今日から此処が僕の家か。さて、今日の準備をするか・・・」
黒羽は懐から泡海ヶ原の学校を調べる。
一通り見てこのアパートの近くの学校を探す。
「泡海ヶ原学園・・・此処の生徒として生活しつつ死神の仕事をしよう・・・」
そう言い終えると黒羽はその場に倒れこんだ。

「もう・・・朝か・・・・」
ボソリと殺鬼が呟く。
帰宅時間が遅かった為2時間の睡眠をとろうと思い床に就いたが
余り寝てないのと疲れがとれていないせいで少しダルかった。
顔を洗って新聞を読み、学生集団失踪事件が解決したことを確認する。
朝食を摂って制服に着替え学校へ向かう。
「殺鬼~」
その声に後ろを振り向く。いつもの元気そうな顔の黒寿が歩み寄って来る。
「黒寿」
「一緒に行こう!」
コイツは疲れるという事を知らないのかと思いながらも一緒に登校する。
黒寿が隣で歩を合わせて歩く。良く考えたらこんな事は初めてだ。
不意に殺鬼が口を開く。
「黒寿、人間が死神が人間になるのは珍しい事なのか?」
黒寿はう~んと考える仕草を見せて答える。
「確かに珍しいね~教科書にも歴史書にもあんまり書かれてないし。」
「あんまり・・・という事はあるにはあるのか?」
黒寿は一瞬悲しそうな表情をした。
「昔、ずっと昔にね神の子と呼ばれるほどの優秀で美しい人間の女の人が居たんだ。
でも彼女は他の人から気味悪がられて迫害されて死神になったんだって。
そして彼女は世界を滅ぼそうとした・・・でも神に倒された・・・」
黒寿はふぅと息を吐いて今度はふふっと笑う。どこか儚げに。
「それ以来死神と神は対立してしまったんだ。
ま、最初から仲悪かったけどね~」
「・・・・・。」
殺鬼の脳内に疑問が浮かんだ。
その人間の契約者についてだ。
契約した相手がそんな騒ぎを起こせば契約相手の死神も只では済まない筈だ。
「その死神の契約者の死神はどうなったんだ?殺されてたのか?」
答えなど解っていた。だが、訊いてしまった。
「うん・・・殺されたよ。凄く屈辱的な方法で・・・。
でも彼は決して彼女を怨まなかった。理由は解らないままだけど・・・」
それ以上二人とも口を開こうとはしなかった。
ここは黙っておくのが得策だろう。
もしも「それはどんな方法なんだ?」などと訊いたらきっと後悔するだろう。
興味本位で訊いてはいけない事くらい解っている。
そうしている内に学校に着いた。

教室に入るとクラスの生徒が騒がしかった。
殺鬼は不愉快だったが黒寿はその状況を楽しんでいた。
担任の教師が教室に入る。生徒が急いで自分の席に着く。
「今日は皆さんに転校生を紹介します。入ってきなさい」
その言葉でクラス中が騒がしかった理由が解った。
また『転校生がこのクラスに来たから』だ。
教室の入り口に立っていた人影が教室に入って来る。
それは殺鬼も絆も黒寿も知っている人物だ。
紅くて長い髪、白く細い体、紅く大きな瞳・・・
「初めまして、闇城黒羽です。宜しくお願いします。」
クラス中の女子の眼がハートになる。

休み時間、思った通り黒羽は女子に囲まれていた。
「闇城君!闇城君は何でこの学校に来たの?」
女子の熱い視線に困惑しながらも質問に答える。
「うーん、そうだね・・・強いて言うなら自立する為かな~」
人差し指で頬を掻きながら苦笑いを浮かべる。
その仕草に女子たちが一斉に「闇城君可愛い~♥」と声を合わせて言う。
「って事は若しかして一人暮らし?」
「うん」
「一人って寂しくない?何なら私達がご飯作りに行くよ?」
「有難う。でも大丈夫だから。」
すると黒寿が割ってはいて来た。
「大丈夫だよー黒羽には猫が居るからさ!」
「黒寿!」
女子たちは黒寿の言葉に興味を示したのか機関銃の様に訊く。
「え、闇城君って猫飼ってるの?」
「うん」
「何匹飼ってるの?」
「えーっと・・・」
数秒考える。女子達は黒羽の言葉に目を輝かせている。
黒羽がニッコリと笑って答える。
「20匹かな~」
女子達は目を見開き、驚いた顔をしている。

4限の体育、生徒達は急いで体操服に着替え、体育館へ向かう。
今日はドッヂボールらしい。
男子と女子で別れ、男子は男子でチームを二つ作り試合をする。
女子も同じ様にする。
試合が始まってから男子は絆コールを送っていた。
絆の居るチームはもう勝った気分である。
絆は成績は並みだが運動神経は良い方だ。
なので絆の居るチームは負けるという事を知らない。
チームを決める時の絆争奪戦は凄まじいものだ。
今はジャンケンで決めているが以前は可也手荒な決め方だった為
教員が止めに入った程である。
試合開始の合図とともに先攻の権利を得た絆がボールを片手に標的を見る。
標的が決まってから息を吐くと勢い良くボールを投げると振り上げた腕が
金属バットのようにボールを打ちつける。
標的にされた生徒はまさか自分の方にボールが飛んでくるとも知らず
油断していたせいか呆気なくその一撃を喰らう。
絆が標的を選ぶ方法はランダムの為その一瞬まで誰が標的にされたのか
見当もつかない。
そうこうしている内相手チームは黒寿と黒羽の二人だけが残っていた。
絆のチームは今のところ誰も相手からの攻撃を受けていない。
(あの二人を倒せば俺達の勝ちだな)
絆が確信を持ってそう思うと、ボールを宙に投げて勢い良く打ち込む。
だが黒寿は避けようともせず只そこに立っているだけ。
誰もが絆の一撃で黒寿が倒れると思った。・・・・が。
飛んできたボールを片手で払い、ボールが絆のチームの生徒にぶつかる。
打ち返されられる様な一撃ではなかった筈なのにあっさりと打ち返された。
余りの出来事にその場にいた生徒は皆立ち尽くすばかりだ。
足元にコロコロと転がって来たボールを拾うと黒寿がニヤリと笑う。
「じゃあ反撃させて貰うよ♪」

昼休み。
「もぉー黒寿の馬鹿ぁー!あんな事して正体がバレたら如何するんだよっ!」
黒羽が半泣き状態で黒寿に体育の授業での事について講義する。
だが黒寿は特に気にする事も無く落ち着いた様子で答える。
「黒羽は大袈裟だな~。大丈夫だって。絶対バレないよ」
「でも・・・」
言いかけると黒寿がふぅと息を吐いて言う。
「だから最後は負けてあげたじゃん。
まぁ、バレたらバレたで僕が何とかするけどね・・・。」
その顔は笑ってはいなかった。
「黒寿?目、怖いよぉ・・・」
黒寿がふっと笑って黒羽の額をつんとつつく。
黒羽は「もぉー!」と眉をハの字にして頬を膨らませる。まるで拗ねた子供のように。
ふと思い出したように黒羽が言う。
「あ、でも殺鬼ちゃんは格好良かったよね!」
黒寿は一瞬何の事かと思ったがそれはさっきの体育の時間の時の事だと気付く。
「ああ、体育の時?惚れたの?」
からかうように言うと黒羽は顔を赤らめて首を横に振る。
「ち、違うよっ!」
黒寿は「冗談だよ」と言って黒羽の髪を撫でる。
「だって、ボールが飛んできたら素早くとって相手チームに向かって投げるし・・・
他の誰よりも凛々しくて、真剣だったから・・・」
「んー、真剣って言うより仕方なく遣ってるっぽいけど」

殺鬼が更衣室から戻って昼食を摂ろうとすると黒寿が駆け寄って来る。
「ねぇ殺鬼、御昼御飯一緒に食べよう!」
「ああ」
「じゃ、屋上行こうよ!あそこ落ち着くしさ~」
まぁ良いかと思い屋上へ向かう。
屋上の扉を開くと其処には可笑しな風景が広がっていた。
「これは一体どういう事だ?」
其処には黒羽、真龍、心愛、心が輪を作って座っていた。
死神が集結しているこの場所に異様なものを感じた。
「黒寿に呼ばれた。」
素気なく心愛が答える。続いて心も答える。
「心愛と同じだよ~」
真龍が笑顔で答える。
「私も黒寿に誘われて来たの」
黒羽がもじもじしながら答える。
「僕も黒寿に呼ばれたから・・・」
黒羽達が言い終えると殺鬼は小さく溜息をついた。
そんなことなど気にも留めず呑気に黒寿が言う。
「いや~殺鬼に死神友達を作って欲しくてさ~」
「・・・まぁ良いか」
ボソリと呟くと弁当の蓋をあける。中身が何なのかなどと楽しむ事もなく。
弁当を作るのが自分以外誰もいないのだから中身が何なのかくらい解るし、
楽しみにする必要も無いからだ。
弁当を手早く食べ終わると唐突に問いかけた。
「何故お前達までこの学校に居る?学校なら他にもあるだろう。
そもそも学校に来る理由は何だ?」
機関銃の如く投げかけられる言葉に心が心愛に弁当のおかずを食べさせて
貰いながら答える。
「ん~この学校を選んだのは此処に殺鬼が居るからだよ。」
また監視する気なのだろうかと思ったが以前真龍が単独だと危ないと言っていたのを
思いだし、大体の事は理解した。
「それに、僕等未成年だし。何よりこの『学校』って所は情報収集が楽に出来るからね~」
「死神にとって『情報』は武器だものね」
真龍が付け加えるように言う。
すると不意に心愛の口が開いた。
「それに・・・学生ほど都合のいいものは無いから・・・」
静かにそう言って再び心の口に弁当の中身を運ぶ。
風がざーっと吹き、真龍の髪が靡く。
「ま、あの御気楽な人間の事なんて動でも良いんですけどね」
黒寿がその続きを言う。
「彼等は僕達と違って生きられる時間が短い。
それでも必死に生きようとするのを見てると面白いよね」
人間を哀れみ、嘲笑うかのような表情で黒寿が笑う。
「・・・・」
『人間』という言葉で殺鬼の脳裏に妹、刹那の姿が浮かび上がる。
自分に似て非なる存在。
13歳の誕生日以降全く顔を合わせていない。
殺鬼の何とも言えない表情を見て黒寿が声をかける。
「殺鬼?」

放課後。生徒達が水槽から解放された魚のように校舎から出ていく。
殺鬼は学校の裏庭の木の枝に座り込んでいた。
樹齢数百年と言っていただろうか、それは太い枝と細い枝が生え、
逞しく其処にあった。
別にこの木に愛着が湧いたわけではなく、ただこうしていたかっただけなのだ。
赤く染まり始める空を眺め、ふと刹那の事を考える。
今、一体何をしているだろう?
訊くとろによると心愛と心は南校舎の小等部に通っているらしい。
皐月だった頃、小学生時代はあそこに通っていたのだろうと南校舎の方を見詰る。
あの頃はまだ耐えられていたのだろうか?
同じ姿で同じ人間の筈なのに殺鬼は皐月の事が余り解らない。
そもそも自分は皐月が死神として覚醒した事が切欠で生まれた『別人格』・・・
過去の自分の記憶はおぼろげにあるがそれが流石に
皐月がどんな人物だったのかまでは解らない。
死神になった理由は解ってもそれ以外はまるで解らない。
まるで殺鬼の中の皐月が殺鬼を拒んでいるかのような・・・・
そう思うと嘗て人間だった『皐月』に対して苛立ちを覚える。
すると下から声がした。
「天音?」
絆だ。不思議そうに殺鬼を見上げている。
「絆」
「そんな所で何してるんだ?帰らないのか?」
殺鬼はさっきまで脳内を支配していた『皐月』へのいら立ちを忘れていた。
そして木の枝に手を付いて答える。
「別に深い理由は無い。唯・・・少しこうしていたかっただけだ・・・」
枝に座り込んでいた腰を持ち上げると、「もう、降りる」とだけ言って其処から飛び降りる。
高さから察するに着地を失敗すれば大怪我だろう。
絆は「見てねぇぞ・・・」とだけ言った。殺鬼には意味が解らなかったが絆の頬は赤かった。
殺鬼と絆の帰る方向は同じだったため途中まで一緒に帰ることにした。
「絆は何故私を待っていたんだ?」
「待ってたつーか通りかかったから偶々見つけたつーか・・・」
何といえば良いのか言葉に詰まって絆が違う話題を振る。
「それよりさお袋さんとは連絡とってるか?」
その言葉で殺鬼の脳内で皐月が味わった精神的苦痛の言葉が蘇る。
とめどなく溢れ、流れ出す皐月の記憶から悲鳴に似た言葉が流れ込む。
黙り込む殺鬼に不信感を抱いた絆が殺鬼の顔を見て言う。
「天音?どうかしたのか?」
「いや・・・何でもない・・・・」
「そうか?」

帰宅後、殺鬼は自分の中で騒ぎ立てる皐月の意識に浸っていた。
あれだけ探れなかったものが今では手に取るように解る。
そうしていく内一つの記憶の中に潜り込んだ。

家中に響く怒声。刹那は自分の姉と母親とのやり取りを自室で訊いていた。
『皐月!この点は何!?』
母親は片手に持ったテスト用紙を皐月に突きだす。
どうやらテストの点に不満が合ったらしい。
テスト用紙の点数の欄いは85点と書かれている。
怒鳴るほど悪い点ではないのだが母親には不満だったらしい。
皐月は怯えたように謝る。
『ご、御免なさい・・・』
数分後、皐月と母親とのやり取りが終わったのか、隣の皐月の部屋の扉が開く音がする。
刹那は扉をノックする。
『刹那?』
扉を開くと皐月は机にノートとテスト用紙を広げ復習をしようとしていた。
そんな皐月の姿を見てより胸が痛む。
『御姉ちゃん、御母さんの言う事なんて気にしない方が良いよ』
『・・・刹那・・・・』
皐月が努力している事は他の誰よりも刹那が一番知っていた。
それでも母親に皐月の頑張りを説明しても信じて貰えなくて、
それが辛くて、毎日皐月と母親のやり取りが終わると皐月を励ます事しか出来ない。
他に出来る事が無かったからかも知れない。
『御免ね・・・私がちゃんとしないから・・・・』
皐月は消え入りそうな声でそう言った。
刹那にこれ以上心配をかけたくない。
刹那が自分を励ましに来る事は嬉しいが、それ以上に辛かった。
『そんなことない!御姉ちゃんが頑張ってる事は私が良く知ってるから!』
自分の事を心配してくれているのは良く解っている。
それでも・・・・
『有難う・・・でも刹那は何も心配しなくても良いんだよ・・・』
それでも、こんな惨めな姿を見られる事が耐えられなかった。
刹那は少し悲しそうな表情で『うん』と答えた。
『でも・・・私は御姉ちゃんの味方だから。何時でも相談に乗るから!』
『-刹那・・・・』
其処で記憶が途切れた。

「刹那・・・」
そう呟くと気が抜けたのかベッドに倒れ込んだ。
頭がモヤモヤする・・・そう思いながら瞼を閉じる。

気が付くと殺鬼は不思議な空間に居た。
恐らく『夢』の中だろう。
水色の空、透明な地面、見慣れない格好をした自分。
すると背後から声がした。
「殺鬼!」
振り返ると黒羽の縫い包みを抱いた黒寿が居た。
「黒寿?」
「やぁ」
笑顔でそう答える黒寿に歩み寄る。
「黒寿・・・此処は一体・・・」
言い終わらない内に足元が歪む。
「!?」
そのまま歪む地面に呑まれると、まるで水中にでも居るかのような感覚だった。
黒寿が逆さに殺鬼の沈むその中に入るとこの場所の説明をした。
「此処は記憶の水底・・・君の記憶の中さ!」
「私の・・・記憶・・・・?」
ぼんやりと考えていると急に脳内に覚えのない映像が流れ込む。
黒く大きな翼を広げた銀髪の女の後姿、汚い部屋に倒れた銀髪の少女、
血塗れの部屋、金髪の男・・・それが収まった頃には夢から覚めていた。
(あれは・・・私の記憶じゃない。あれは一体何だったんだ・・・・
黒い翼・・・死神なのか・・・あれは・・・・)
制服に着替え、学校に向かいながらもその事を考える。
「何してるんですか?」
背後から声をかけられ我に返る。
何時の間にか花を握りしめていた。急いでそれを離す。
「いや、何でもない。」
「花、好きなんですか?」
「いや、別に」
そう答えると少年はニッコリと笑って「そうですか」と言って半眼状態でこう言った。
「僕は好きだな。花は、裏切ったりしないし・・・・」
「・・・・・・」
少年の言葉に目を細める。
「-と、そろそろ行かないと!それではまた!」
「・・・ああ」
少年の制服、そういえば自分と同じ学校の制服だったなと思いながら学校に向かった。

「殺~鬼!暇だよ~」
殺鬼の頭に黒寿が顎を載せて詰まらなそうに言う。
「生憎私は暇じゃない」
素気なく答えると頭の上で黒寿が唸る。
というのも午後は教員たちの会議がある為全生徒の5限と6限が自習だからだ。
そのせいで黒寿は可也暇だった。
「殺鬼は何で暇じゃないの~?」
重い・・・と心の中で呟きながらダルそうに答える。
「テスト近いだろ。一応勉強してるだけだ」
「へぇ~」
感心の声が上がる。
正直、暇潰しに勉強以外の事が思い浮かばなかったから勉強をしているだけだった。
本を読むというの事も出来たが今日は本を持ってきていなかった。
「でも皆遊んでるよ~」
黒寿がなおも詰まらなそうに唸っている。
「お前、若しかして構ってほしいのか・・・・?」
「うん!!」
元気一杯に答えられ脱力状態で「そうか・・・」と返す。
絆と黒羽を呼んで何かしようと考えたが、季節的に暑い事もあってか
怖い話をする事になった。
死神が怖い話をすると言う事に疑問を抱いたが突っ込む気力もなかった。
「すると彼女は見てしまった・・・彼が隠していた秘密を・・・」
虚ろな目で殺鬼が語る。
「何と其処には・・・」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
もう止めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
黒羽が涙を流しながら叫ぶ。
「ちょ、闇城!?」
絆が驚いた表情で黒羽を見る。
「大量の女装グッズが出てきたんだ・・・」
殺鬼が話の続きを言うと顔色がより悪くなった黒羽が更に涙を流す。
「続き言わないでよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
騒ぐなと黒羽の耳元で殺鬼が囁く。
呆れ気味の絆が溜息交じりに訊く。
「つーか闇城はどの辺が怖かったんだよ?泣くほど怖いか?」
絆の問いに涙目で答える。
「最初から最後まで全部です・・・」
如何反応すれば良いのか解らず黙り込む。
「黒羽ってば本当面白い反応するよね~」
黒寿がからかうように言う。
「殺鬼~続き!続き!!」
黒寿の言葉にぞっとした黒羽が泣きながら「止めてよ~」と懇願する。
殺鬼が溜息を吐いて言い放つ。
「後5分で授業終わるぞ。」

校長室の外、廊下で青い髪の少年が窓の外を見ていた。
「氷室、何してるんだ?」
教員の声に目を細めながら答える。
「いえ、何でも・・・それより行きましょう」
そう言って二人は校長室に入って行った。

昇降口、殺鬼は上履きを下駄箱に入れようとしていた。
「殺鬼!もう帰るの?まだ16時にもなってないよ」
黒寿は不思議そうに言った。昨日あんな事があったのに一人で帰るからだろう。
「ああ。今日は・・・何と無くだ」
「そっか!それじゃまた明日!」
「ああ。」
歩き出そうとしたその時・・・
「殺鬼!」
黒寿の方を再び振り返るとさっきの表情は消え、真剣な眼差しでこちらを見詰ている。
「天使には・・・天使には充分気を付けなよ!」
「ああ」

帰宅途中、ふと歩を止めて空を見上げる。
「天使には充分気をつけろ・・・か。」
黒寿の言葉を呟く。
あんな奴でも人の心配をする心があるんだなと思うと、少し笑える。
今朝はあんなにも人間の事を馬鹿にしていたのに。
自分が黒寿の契約者だからそう言ったのかも知れない。
不意に風の音ともに声が聞こえた。
「死神にも多少の慈悲はあるという事だ・・・」
振り返ると其処に立っていたのは心愛だった。
風に長い髪が靡いている。綺麗な小麦色の長髪だ。
「真龍からの伝言。天使が積極的に活動を始めた・・・単独行動には充分注意するように」
「ああ」
さっき考えていた事への言葉は恐らく心愛の持つ読心術だろう。
そう理解した殺鬼に更に言う。
「奴等は私達を消す為なら何でもする・・・人間を犠牲にする事もな・・・」
それは何かを警告すような言い方だった。
「用はそれだけだ。私は真龍の所に戻る。」
「ああ」
心愛が殺鬼に背を向け歩き出す。
殺鬼の中で心愛の言葉が浮かぶ。
(人間を犠牲にしてまでも私達を消す・・・か)
ふと刹那の笑顔が脳内に浮かぶ。
「刹那・・・」
無意識のうちにそう呟くと背後から声がした。
「どうかしたんですか?」
振り返ると今朝出会った少年が首を傾げてこちらを見ていた。
「お前・・・今朝の・・・」
「また会いましたね」
長い髪を右側に纏めて結んでいる。片目は長い前髪に隠されていて見えない。
朝見た時は急いでいて気にしていなかったが良く見ると黒羽と同じくらいの長髪に
色白の肌に細い体・・・髪の色は薄い桃色だ。
「お前、泡海ヶ原学園の生徒だよな」
殺鬼と少年は土手に腰掛けて話していた。
「はい、そうですよ。」
「今日一日、一度も見掛けなかったぞ」
殺鬼の疑問を少年はあっさりと解いた。
「ああ、僕体弱いから保健室通いなんですよ」
殺鬼が一瞬目を見開く。確かに健康的には見えない。
「大丈夫なのか?」
「はい。激しい運動以外なら何とか・・・」
「そうか」
不意に少年が空を見上げて呟く。
「でも何時か僕も皆と一緒に体育したいな・・・」
その顔はどこか悲しげに見えた。
「お前・・・名前は?」
殺鬼が唐突に投げかけた問いにも笑顔で答える。
「堕國蓮樹です。君は?」
「天音殺鬼だ。」
「殺鬼さんですか。」
「蓮樹・・・変わった名前だな」
「良く言われます」
蓮樹が腕時計に視線を移す。
「あ、もうこんな時間・・・」
そう言って立ち上がると殺鬼を見てニッコリと笑う。
「じゃあ僕はそろそろ帰りますね」
「ああ」
土手を立ち去ろうと立ち上がろうとするとまたも背後から声がした。
「御姉ちゃん?」
訊き覚えのある声、そして『御姉ちゃん』という呼び方・・・
心臓の音が激しくなる。ゆっくりと振り返る。
其処に立っている少女の姿を見るとそれは紛れもなく自分の妹、刹那だった。
「皐月御姉ちゃんでしょ?」
殺鬼を見上げる大きな瞳に息を呑む。

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